「今日は、何にもできなかったなぁ。」
夕暮れの道で、だいふくーがぽつりとつぶやきました。
行きたかった町には着けなかった。
楽しみにしていた景色も見られなかった。
予定していたところまで、歩けなかった。
そんなだいふくーに、隣を歩いていたあべたんが言いました。
「でも、ここまで来たよ。」
「え?」
「朝いた場所は、もうずっと後ろだよ。」
だいふくーは振り返りました。
そこには、今日歩いてきた長い道が続いていました。
今日の「夜もっち」は、そんなお話です。
僕は、この場面を書きながら、自分自身のことを考えていました。
頑張ったのに、結果が出なかった日。
そんな日を、どう受け止めればいいのだろう。
今日は、そのことを書いてみたいと思います。
会社員時代は、結果を出すことが仕事だった。
33年間、会社員として働いてきました。
仕事には目標があります。
売上目標。
業績目標。
期限。
評価。
どれだけ頑張ったかより、何を達成したか。
それが問われる世界です。
もちろん、努力の過程を見てくれる人もいました。
でも、最終的には結果が必要です。
一生懸命やりました。
頑張りました。
それだけでは、仕事として十分ではありません。
僕自身も、そういう考え方の中で長い時間を過ごしてきました。
だから、今でも結果にはこだわります。
目標を決めたら、達成したい。
売上を作りたい。
数字を伸ばしたい。
これは、33年間で身についた考え方なのだと思います。
そして、起業してからも、その考え方は変わりません。
ただ、一つだけ変わったことがあります。
結果が出ない時に、自分をどう評価するか。
その難しさを、以前より強く感じるようになりました。
58歳で起業。毎日が新しい挑戦になった。
会社を辞めて、MINIBAKKAを立ち上げました。
ローバーミニとBMW MINI。
長年好きだったMINIを中心に、商品を作り、販売し、ブランドを育てていく。
自分で考えたことを、自分で形にできる。
これは本当に面白いことです。
でも、会社を作ったからといって、すぐに商品が売れるわけではありません。
デザインを考える。
商品を登録する。
紹介文を書く。
SNSで発信する。
ホームページを整える。
動画を作る。
一つひとつの作業には時間がかかります。
そして、時間をかけたからといって、必ず売上につながるわけでもありません。
朝から晩まで作業しても、注文が入らない日があります。
投稿しても、思ったほど反応がない日があります。
何度も考えて作ったデザインが、ほとんど見てもらえないこともあります。
そんな日は、やはり面白くありません。
「今日は、何をやっていたんだろう。」
そう思うこともあります。
でも、本当に何もしていなかったのでしょうか。
売上がゼロの日は、価値もゼロなのか。
ここは、経営者として避けて通れない問題です。
売上がゼロなら、売上はゼロです。
どれだけ努力したとしても、その日の売上が増えるわけではありません。
会社を続けるには、お金が必要です。
商品を売り、利益を出し、事業を成長させなければなりません。
だから、
「頑張ったから、それでいい。」
とは思いません。
結果が出ないなら、原因を考える必要があります。
商品に魅力が足りないのか。
価格が合っていないのか。
そもそも見てもらえていないのか。
販売までの導線が分かりにくいのか。
改善しなければ、同じ結果が続くかもしれません。
でも、ここで一つ区別したいことがあります。
売上がゼロだったことと、その日の行動に価値がなかったことは、同じではない。
新しい商品を完成させた。
今まで分からなかったことを覚えた。
反応の良い投稿の傾向が少し見えてきた。
お客様に届けるための準備が進んだ。
それは、今日の売上には表れないかもしれません。
でも、明日以降の結果につながる可能性があります。
もちろん、可能性だけで満足してはいけません。
実際の結果につなげることが必要です。
だからこそ、今日の努力を否定するのではなく、次の行動に変えていきたいと思うのです。
SNSの数字は、時に残酷だ。
今、MINIBAKKAもMochiesも、SNSを使って発信しています。
Instagram。
X。
TikTok。
note。
投稿すれば、数字が見えます。
閲覧数。
いいね。
フォロワー。
再生回数。
反応が良い日は嬉しい。
でも、反応が少ない日は、少し気持ちが沈みます。
時間をかけて作った作品なのに、ほとんど見てもらえない。
自分では良いと思ったのに、反応がない。
そんなこともあります。
ただ、数字は大切な情報であっても、作品の価値をすべて決めるものではありません。
投稿する時間。
見せ方。
最初の数秒。
文章の入り方。
誰に届けようとしているのか。
数字が伸びない理由はいろいろあります。
だから、数字を見て落ち込むだけではなく、次に何を変えるかを考える。
そこまでやって、初めて数字に意味が生まれるのだと思います。
数字は、自分を責めるためではなく、次の一手を考えるために使いたい。
そう思っています。
だいふくーの旅も、毎日が順調ではない。
「もっちもちMochies」は、日本中のお餅に出会う物語です。
だいふくーは旅を続けています。
新しい町へ行き、新しい仲間と出会い、少しずつ世界を広げていきます。
でも、旅には予定どおりにいかない日もあるはずです。
道に迷う日。
雨が降る日。
疲れてしまう日。
目的地までたどり着けない日。
そんな時、だいふくーはきっと思うでしょう。
「今日は、何にもできなかったなぁ。」
でも、あべたんは違うものを見ていました。
目的地には着かなかった。
それでも、朝いた場所からは進んでいる。
歩いた道がある。
見た景色がある。
経験したことがある。
それを、あべたんは教えてくれました。
「でも、ここまで来たよ。」
僕は、この言葉が好きです。
「大丈夫。何とかなるよ。」
という励ましとは、少し違います。
何の根拠もなく慰めているわけではありません。
実際に歩いてきた道を、ちゃんと見ている。
そこがいいんです。
「できなかったこと」ばかり数えていないか。
一日の終わりに、今日のことを振り返る。
すると、つい、できなかったことが浮かんできます。
あれも終わらなかった。
これも進まなかった。
予定していた作業が残っている。
思ったほど反応がなかった。
売上が伸びなかった。
できなかったことは、目につきやすいものです。
一方で、できたことは意外と忘れてしまいます。
朝、考えていたことを一つ形にした。
昨日分からなかった操作ができるようになった。
新しいアイデアを一つ見つけた。
誰かの投稿からヒントを得た。
そんな小さな前進は、数字に表れないこともあります。
でも、それを全部無視してしまうと、毎日が失敗の連続に見えてしまいます。
だから、一日の終わりには二つのことを考えたい。
今日、できなかったこと。
そして、今日、できたこと。
どちらも見る。
反省だけでもなく、自己満足だけでもない。
その両方が必要なのだと思います。
Mochiesも、最初から今の形ではなかった。
Mochiesを作り始めた頃、だいふくーはひとりでした。
そこから仲間が増えました。
ずんだー。
あべたん。
かしわん。
いそベー。
さくらん。
日本各地のお餅が、少しずつ物語に登場しました。
表紙を作り、挿絵を作り、キャラクターの形を整える。
何度も描き直すこともありました。
思ったとおりの姿にならないこともありました。
お餅の特徴がうまく表現できないこともありました。
でも、その度に修正しながら、少しずつ世界を作ってきました。
最初から完璧だったわけではありません。
一つ作って、直して、また次を作る。
その繰り返しです。
もし、最初の作品が思いどおりにできなかった時点でやめていたら。
今の仲間たちは生まれていなかったでしょう。
そう考えると、完成しなかった日や、修正ばかりしていた日にも意味があったのだと思います。
小説『零等星』にも通じること。
今、もう一つ取り組んでいるのが小説です。
『零等星――あなたの思い出、買い取ります。』
58歳で会社を辞めた男が、自分の価値を問い直す物語です。
主人公は、会社という肩書きを失い、自分の値段がゼロになったように感じています。
でも、人間の価値は、本当に肩書きや収入だけで決まるのでしょうか。
これは、僕自身が考え続けていることでもあります。
会社員として積み重ねた33年間。
そこで得た経験。
出会った人たち。
成功したこと。
失敗したこと。
それらが、退職した瞬間になくなるわけではありません。
同じように、今日思いどおりにいかなかったからといって、今日の自分がゼロになるわけでもない。
物語を書いていると、時々、登場人物の言葉が自分自身に返ってくることがあります。
不思議なものです。
ただし、「頑張った自分」に甘えすぎない。
ここで、もう一つ大切にしたいことがあります。
今日のテーマは、うまくいかなかった日にも花まるをつけよう、という話です。
でも、それは何もしなくてもいいという意味ではありません。
結果が出ないことを、すべて肯定するわけでもありません。
同じことを繰り返して、同じ結果しか出ないなら、何かを変える必要があります。
努力の方向が違っていることもあります。
優先順位を間違えていることもあります。
やらなくてもいいことに、時間を使っていることもあります。
特に起業してからは、時間もお金も大切です。
だから、今日の自分に花まるをつけるなら、その理由をきちんと考えたい。
「今日は、ここまでできた。」
「でも、ここは改善しよう。」
「明日は、この方法を試そう。」
そんなふうに。
自分を認めることと、自分に甘くなることは違う。
僕は、そう考えています。
58歳。昨日の自分より、一歩でも前へ。
若い頃は、遠くの目標を見ていました。
もっと成果を出したい。
もっと上へ行きたい。
もっと大きな仕事をしたい。
もちろん、今も目標はあります。
MINIBAKKAを成長させたい。
Mochiesを多くの人に知ってもらいたい。
小説を読んでもらいたい。
そして、事業としてきちんと収益を生み出したい。
でも、目標が大きいほど、今の自分との差が気になることがあります。
まだまだ足りない。
まだここまでしか来ていない。
そう考えてしまう。
そんな時こそ、昨日の自分と比べてみたい。
昨日できなかったことが、今日はできた。
昨日知らなかったことを、今日は知った。
昨日はなかった作品が、今日は一つ増えた。
小さな変化です。
でも、それを積み重ねていくしかない。
人生に、突然すべてが変わる魔法のような日があるとは限りません。
むしろ、何でもない日の小さな行動が、あとになって大きな違いを作るのだと思います。
休んだ日にも、意味はある。
もう一つ、忘れたくないことがあります。
毎日、前進しなければいけないのでしょうか。
僕は、そうは思いません。
疲れている日もあります。
体調が優れない日もあります。
気持ちがついてこない日もあります。
そんな日は、無理に進まない方がいいこともあります。
休む。
眠る。
好きなものを食べる。
何もしない時間を作る。
それも大切です。
旅を続けるだいふくーだって、毎日歩き続けていたら疲れてしまいます。
時には、道端で休んでもいい。
仲間とゆっくり話してもいい。
景色を眺めるだけの日があってもいい。
休むことは、歩いてきた道を消してしまうことではない。
また歩き出すために必要な時間なのだと思います。
あべたんは、ちゃんと見ていた。
今日の物語に戻ります。
だいふくーは、目的地に着けなかったことを気にしていました。
でも、あべたんは、今日歩いてきた道を見ていました。
同じ一日です。
同じ道を歩いてきました。
それなのに、見ているものが違った。
だいふくーは、届かなかった場所を見ていた。
あべたんは、進んできた道を見ていた。
どちらも事実です。
でも、あべたんの言葉があったから、だいふくーは少し笑えました。
「そっか。今日も歩いたんだね。」
僕は、この場面に大切なことがあると思います。
自分ひとりでは、できなかったことばかり見てしまう。
でも、誰かが小さな前進に気づいてくれる。
そんな仲間がいると、また歩き出せる。
そして、自分も誰かにとって、そんな存在になれたらいい。
今日の自分に、小さな花まる。
一日が終わります。
今日も、いろいろなことがありました。
思いどおりにいったこと。
うまくいかなかったこと。
予定していたのに、できなかったこと。
思いがけず、できたこと。
全部合わせて、今日という一日です。
できなかったことだけを数えて、今日を失敗にしてしまうのは、少しもったいない。
もちろん、反省は必要です。
明日の改善も必要です。
でも、最後に一つくらい、自分を認めてもいいのではないでしょうか。
「今日は、ここまでやった。」
「昨日より、少し分かった。」
「また明日、やってみよう。」
そんな言葉を、自分にかけてあげたいと思います。
大きな花まるでなくてもいい。
小さな花まるで十分です。
思いどおりに進めなかった日と、何も進まなかった日は違う。
そして、何も進めずに休んだ日だって、必要な一日だったかもしれない。
だいふくー。
今日は、行きたかった町には着けなかったね。
でも、ここまで歩いてきた。
あべたんも、ちゃんと見ていたよ。
明日は、どこまで行けるだろう。
分からないけれど、また歩いてみよう。
僕も、明日また挑戦します。
MINIBAKKAも。
Mochiesも。
『零等星』も。
結果を出すために、考えて、動いて、改善していく。
そして、一日の終わりには、今日できたことも忘れないようにしたい。
今日も、もちもち。🍡
なんでもない日が、いちばんいい。
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